小田中直樹『歴史学ってなんだ?』PHP新書、PHP研究所、2004年、205頁
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本書は、著者がいうように「歴史学の入門書」として基本的な知識を体系的に学べる書籍でした。
「歴史学とは何か」「歴史学は、歴史上の事実である"史実"にアクセスできるか」「歴史を知ることは役に立つか、役に立つとすればどんなとき、どんなかたちで役に立つか」ということを考察し明らかにしています。
歴史を学ぶと役に立つとはよく言われていることですが、私たちの日常生活でどのように役に立つのでしょうか?
具体的なアドバイスが記述されていました。
また、「歴史書と歴史小説のちがい」については、塩野七生『ローマ人の物語』、本村凌二『ローマ人の愛と性』、南川高志『ローマ五賢帝:「輝ける世紀」の虚像と実像』などが引用されており楽しく読めました。
歴史学とは、史料批判を重ねて、史実を明らかにし(認識)、認識した史実に意味を与え、他の史実と関連させ、まとまったイメージの歴史像を描く作業(解釈)だと本書で定義されています。
その歴史像が100%の真実ではないからすべて「物語」だと考えるのは早計だとも述べられています。
歴史学は科学と同じように、「不思議さに驚嘆する感性」や「あらゆる考えに心を開く」謙虚さを大切にした上で、「懐疑」し「証拠」には厳しい姿勢を身につける人々を生み出すことに「意味や意義」があるとの考えには共感できました。
読書するときも無批判に受け入れたり拒絶したりせず、一度受け入れつつ自分の頭で再考することが大切だという考えに共通するものだと感じました。
おすすめの関連書籍
エドワード・カー『歴史とは何か』(清水幾太郎訳、岩波新書、岩波書店、1962年、252頁)
渓内謙『現代史を学ぶ』(岩波新書、岩波書店、1995年、254頁)
良知力『青きドナウの乱痴気:ウィーン1848年』(平凡社ライブラリー、平凡社、 1993年、289頁)