ユヴァル・ノア・ハラリ『21 Lessons:21世紀の人類のための21の思考』柴田裕之訳、河出書房新社、2019年、466頁

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本書は、21世紀という激変の時代に住む私たちが抱えるグローバルな問題を取り上げ、その世界でどのように生きていくべきなのかを教えてくれる書籍でした。

著者は、「人生で何をするべきか?」「人生の意味とは何か?」と、投げかけてきます。

その答えを自分で見つけるために「現在の問題」と「自分自身の心」を知り、「明確な考えを持つ必要」があると書かれています。

また、考えるだけではなく、行動を起こすことが大切だと述べられています。

行動を起こす簡単な方法は、関連する組織に参加し、協力することだと著者はアドバイスをくれます。

題名の通り、本書は21のテーマから構成されています。
長くなりますが、各章で論じられている要点を自分なりに取り上げてみました。

1 「幻滅:先送りにされた"歴史の終わり"」では、20世紀の3つの物語(ファシズム、共産主義、自由主義)を振り返る。新しい物語に取り組むためには、これからテクノロジーがもたらす難題を理解する必要があると著者は言う。

その難題が2章から提示、考察されていきます。

2 「雇用:あなたが大人になったときには、仕事がないかもしれない」では、テクノロジーの進化による「雇用市場」「働き方」の変化に関する問題。

3 「自由:ビッグデータがあなたを見守っている」では、「アルゴリズム」依存による「自由」と「存在意義」の喪失に関する問題。

4 「平等:データを制する者が未来を制する」では、「データ」の所有と使用方法による権力の集中化に関する問題。

5 「コミュニティ:人間には身体がある 」では、オンラインのコミュニティーと親密なオフラインのコミュニティーにおける人間関係の問題。

6 「文明:世界にはたった一つの文明しかない」では、グローバル化に伴なう異なる文明の接触における衝突の問題。

7 「ナショナリズム:グローバルな問題はグローバルな答えを必要とする」では、ナショナリズムでは乗り越えられない核戦争や気候変動についての問題。

8 「宗教:今や神は国家に仕える」では、虚構の物語を基盤としたアイデンティティーの問題。

9 「移民:文化にも良し悪しがあるかもしれない」では、グローバル化時代における移民と難民の受け入れ問題。

10 「テロ:パニックを起こすな」では、核テロ・サイバーテロ・バイオテロが深刻な脅威となり得るが、優先して政治的資本を投じるべき問題ではないと明言。なぜか?

11 「戦争:人間の愚かさをけっして過小評価してはならない」では、現在の経済的資産は「モノ」ではなく、「知識」だから戦争をするメリットはないが、戦争はなくならないと考察。なぜか?

12 「謙虚さ:あなたは世界の中心ではない」
では、自分や自分の文化、宗教、集団など、が他よりも優れていると考えているならば、謙虚さが必要だ、と。

13 「神:神の名をみだりに唱えてはならない」では、私たちは答えのわからない疑問や無知に対して「神」という名前をつけて語っている、と。

14 「世俗主義:自らの陰の面を認めよ」では、世俗主義的な理想とは何か、について考察。キーワードは、「真実」「思いやり」「平等」「自由」「勇気」「責任」。

15 「無知:あなたは自分で思っているほど多くを知らない」では、思考や知識をいかに獲得するかを考察。

16 「正義:私たちの正義感は時代後れかもしれない」では、「真実を理解して正義を見つける」ためにはどうすべきなのかを考察。

17 「ポスト・トゥルース:いつまでも消えないフェイクニュースもある」では、情報の選択と質について考察。

18 「SF:未来は映画で目にするものとは違う」では、テクノロジーや社会経済の変化を私たちに伝えるためにSFという芸術ジャンルは重要かもしれない、と。

19 「教育:変化だけが唯一不変」では、情報の意味を理解したり、情報の断片を結びつけて「世の中の状況を幅広くとらえる能力」を養う教育が必要だと提言。また、テクノロジーの進化により人生に「変化」が絶えず起こるようになるため、「絶えず学習して自己改造する能力」も必要だと考察。

20 「意味:人生は物語ではない」では、宗教、イデオロギーやナショナリズムなどの物語に「人生の意味」の答えをみいだす事はできないと断言。「もしこの世界や人生の意味や自分自身のアイデンティティーについての真実を知りたければ、まず苦しみに注意を向け、それが何かを調べる」ことだと著者は言う。

21 「瞑想:ひたすら観察せよ」では、「苦しみ」を生み出す「自分自身の心」を観察することが大切で、心の反応を知ることは自分の人生をどう生きるのかを考え、知ることにつながる、と。自分を観察する方法の一つとして「ヴィパッサナー瞑想」を紹介。

本書を読んだ私なりの感想としては、現在のさまざまな問題を知り、考えさせられる内容でした。

著者が言うように、すべてのことを知りすべてのことを考えていくことはできません。

私の心ひかれるテーマについて、深掘りしつつ行動をしていきたいと思います。

各章の参考文献も記載されており、興味のあるテーマを深掘りするための教科書的役割にもなります。