ウェルビーイングな日々を過ごすために考えるべきこと

この記事を読むのに必要な時間は約 5 分です。

ウェルビーイングの定義

初めて言葉として登場したのは、1946年に設立された世界保健機構(WHO)の憲章です。訳語としては「健康」「幸福」「福祉」「よいあり方」などが当てられてきました。健康とは、身体的、精神的、社会的に良好で、全てが満たされた状態であると定義付けされた中の、「満たされた状態」がwell-beingという英単語です。

身体的、精神的、社会的に良好の状態を広い意味で健康といいます。狭い意味での心身の健康だけでなく、心の豊かな状態である幸福と、社会の良好な状態を作る福祉を合わせた、心と体と社会の良い状態がウェルビーイングです。

なぜ、今注目されているか:学問的理由と社会的理由

1980年代以来、ポジティブ心理学を中心に様々な研究が行われてきました。現在、日本でもウェルビーイングが注目されています。一体なぜでしょうか。 1つは、幸せな人は創造性が3倍高いこと、生産性が1.3倍高いこと、寿命が7年〜10年長く、しかも健康であることなどが知られるようになってきたためです。2つ目は、価値観が移ってきたことにあります。カネやモノ、地位のように他人と比べられる価値から、幸せや健康など他人と比べるものではない価値に変化しているためです。さらに、SDGsに代表されるように世界的にも、環境問題や貧困・格差の問題など、単なる右肩上がりの成長を目指すべきではない理由が色々と生じています。そうした中で、ウェルビーイングに注目が集まっています。

あなたの人生の満足度は?:人生満足度尺度(SWLS:Satisfaction with Life Scale )

「人生満足度尺度」は、幸せを測るためのアンケートで、5つの質問それぞれに7段階の答えを選ぶ形式となっています。合計して、すべて1なら最低の5点、すべて7なら最高の35点となります。日本人1,500人に聞いた結果は、平均18.9点となっています。

a〜eに対して、それぞれ当てはまる数字を記載する。

1、まったく当てはまらない /2、ほとんど当てはまらない /3、あまり当てはまらない /4、どちらともいえない /5、少し当てはまる /6、だいたい当てはまる /7、非常によく当てはまる

a, ほとんどの面で、私の人生は私の理想に近い

b, 私の人生は、とても素晴らしい状態だ

c, 私は自分の人生に満足している

d, 私はこれまで、自分の人生に求める大切なものを得てきた

e, 人生をやり直せるとしても、ほとんど何も変えないだろう

5つの数字の合計は何点だったでしょうか。

米国心理学者、故エド・ディナー氏が開発した「人生満足度尺度」となります。その他、幸せと性格の関係、幸せと収入の関係、幸せへの文化の影響など、さまざまなハピネス研究の第一走者です。

年収と幸福度の関係

年収と幸せの関係についての研究(ノーベル経済学賞を受賞した米国の心理学者・行動経済学者のダニエル・カーネマン教授)があります。年収が75,000ドル(約1,000万円)に達するまでは年収が増えるほど人は幸せになるけれども、それを超えると年収と感情的幸福は比例しなくなるということを明らかにしています。※1

(※1)Kahneman D, Deaton A. High income improves evaluation of life but not emotional well-being. Proc Natl Acad Sci U S A. 2010 Sep 7;107(38):16489-16493.

(※2)Killingsworth MA, Kahneman D, Mellers B. Income and emotional well-being: A conflict resolved. Proc Natl Acad Sci U S A. 2023 Mar 1;120(10):e2208661120.