「TED TALKS」日経BP社

この記事を読むのに必要な時間は約 9 分です。

TED代表クリス・アンダーソン著書の「TED TALKS スーパープレゼンを学ぶTED公式ガイド」を読んだので、その一部を紹介いたします。

プロローグ

この本の目的は、力のあるスピーチがどう奇跡を呼ぶのかを説明し、そのための武器をあなたに提供することだ。

優れたトークこれというひとつの型は無い、ということだ。

いちどうまくいった方程式があっても、いつまでもうまくいくとは限らない。

新鮮さこそ、優れたトークの魅力だからだ。

あなたの仕事は、何か価値のあることを、あなたにしかできないやり方で語ることだ。

TEDの使命は、力のあるアイデアを広め育むことだ。

この本の目的はTEDトークの方法を教えることだけじゃない。パブリックスピーキングを手助けすること、つまり、ビジネスで、教育の場で、公の場面で、説明したり、刺激したり、情報提供したり、説得したりするのを助けることだ。

根底に流れる法則は、広い意味での「プレゼン・リテラシー」の確かな土台になるはずだ。

どんなスピーチにも役に立つツールと知見がここにはある。

優れたアイデアをうまく世に出せば、それは高速で世界中に広がり、数百万人の心に焼きつけられる。

アイデアを送り出す最高の方法を見つけ出せたら、すごく役に立つはずだ。

基本

1プレゼンテーション・リテラシー

プレゼンのスキルは、だれでも身につけられる

TEDの登壇者からトークの影響について嬉しい話をたくさん聞いてきた。

何よりも感動するのは、アイデアが広まってだれかの人生が変わったという話だ。

プレゼンテーション・リテラシーは21世紀に欠かせないスキルだ。自分が何者で、なにが大切かを伝えるために、いちばん効果的なツールだ。

それを身に付ければ、自信は花開き、何を目指すにしろ人生の成功に役立ってくれるはずだ。

2 アイデアを築く 優れたトークは贈り物だ

講演者のいちばんの使命は、自分が心の底から大切にしている「なにか」を取り出して、聞き手の心の中にそれをもう一度築き上げることだ。その「なにか」を、僕らはアイデアと呼ぶ。人々が拠り所にし、持ち帰り、価値を見出し、ある意味で人生を変えるような概念だ。

パブリックスピーキングで本当に大切なのは、自信でも、存在感でも、口のうまさでもない。「語る価値のあるなにか」を持っていることだ。

世界の見方を変えてくれるものはなんでも、「アイデア」だ。人の心の中に説得力にあるアイデアを植え付けられたら、奇跡を起こしたことになる。

おそらく気づいていないだけで、あなたの中には伝える価値のある「なにか」があるかもしれない。あなたには、あなただけの人生がある。あなたにしかない経験がある。その経験から引き出される洞察には、伝える価値がある。どれにその価値があるかを見極めればいいだけだ。

最高のトークの多くは、個人的なストーリーとそこから引き出される教訓に基づくものだ。

重要なアイデアを新鮮なストーリーで包んで、上手に伝えられたら、素晴らしいトークになる。

あなたには伝えたい大切なことがある。そして、あなたの目標は、聞き手の心の中にあなたのアイデアを再生することだ。では、どうしたらそれができるだろう?

言葉の魔法は、話し手と聞き手が理解を共有できる範囲でしか効かない。そして、誰かの頭の中にアイデアを再生するカギがここにある。それは、聞き手の持っているツールしか使えない、ということだ。あなたの言葉、あなたの思い込み、あなたの価値観から始めると、失敗する。逆に、聞き手のものから始めよう。共通の土台がなければ、彼らの頭にあなたのアイデアを植え付ける事はできない。

トークの本質は、言葉にかかっている。ストーリーを語るのも、アイデアをつくり上げるのも、複雑なことを説明するのも、論理を主張するのも、行動に訴えるのも、言葉だ。だからもし、スピーチではボディランゲージお話し言葉より大事だと言われたら、それは科学を誤解してると思っていい。

人は言葉によってアイデアを伝えるからこそ、人間同士の対話が重要なのだ。僕らの世界観は、そうやって生まれ、形づくられていく。僕らのアイデアが、僕らをつくる。そしてだれかの心に自分のアイデアを広げる術を見つけ出した話し手は、計り知れない連鎖反応を引き起こすことになるのだ。

3 よくある落とし穴

4つのNG

売り込み

講演者の仕事は観客に「与える」ことで、「奪うこと」じゃない。それが大原則だ(純粋な営業を目的にするビジネスの場合でさえ、与えることを目標にすべきだ。最高の営業マンは相手の立場に立って、どうしたら相手のニーズにいちばん答えられるかを想像する)。

とりとめのない話

組織バカ

啓発もどき

どうしたら成功できるんだろう?まずいちばん大切なのは、わかりやすいことだ。

4 スルーライン

それで、なにが言いたいの?

トークの目的は、意味のあるなにかを伝えることだ。

演劇や映画や小説の分析に使われる言葉がある。スルーラインだ。つまり、一つひとつの物語の要素をひとつにまとめる、一貫したテーマのことだ。

話しての目標は、聞き手の心の中に奇跡のようななにかを築くことで、スルーラインは、話し手が築こうとするアイデアのすべての要素を強く結びつける紐か縄のようなものだと思ってほしい。

これは、一度のトークでひとつのトピックやひとつのストーリーしか語れないという意味ではないし、寄り道せずにある方向にまっしぐらに進まなくちゃならないわけでもない。ただ、すべての部分がつながっていなければならないという意味だ。

聞き手の中に植え付けたい具体的なアイデアは何か?観客に覚えてほしいポイントは何か?

スルーラインはありきたりではいけないし、陳腐なものでもいけない。

好奇心をかき立てるなんらかの切り口がないといけない。

トークは旅だと考えてみよう。それは、話し手が案内人となって聞き手と一緒にたどる旅だ。あなた、つまり話し手が、聞き手に一緒に来てほしいなら、どこに行くかのヒントをあげなければならない。そして、その旅の目的地に一歩一歩着実に近づかなければいけない。旅のたとえで言えば、その道程がスルーラインだ。突然にありえない場所に飛んではいけないし、話し手と聞き手が一緒に望みの目的地に行けるように導かなければならない。

偉大な思想家や作家のこんな言葉もある。「もっと時間があれば、短い手紙をかけたのに」

偉大なるトークを限られた時間に収めるには、真剣な努力が必要になる。

間違ったやり方

言わなければいけないことを全部盛り込んで、それぞれを少しずつ縮めて全体を短くするのは間違ったやり方だ。

あまりに多くのコンセプトをつないだスルーラインはうまくいかない。複数のトピックを要約形にして急ぎ足で駆け抜けるのは、逆効果だ。なんの印象も残らないトークになってしまう。

はじめてそれを聞く人には、おそらく概念的で無味乾燥で浅い話に聞こえてしまうだろう。

単純な方程式だ。詰め込みすぎは説明不足と同じことになる。

興味をそそる話をするには、きちんと時間をとって少なくとも次の2つのことをしなければならない。

  • なぜこの話が大切なのかを説明する……どんな問いに答えようとしているのか、どんな問題を解決しようとしているのか、どんな経験を伝えようとしているのか?
  • それぞれのポイントを実例や逸話やは事実で肉付けする

正しい方法

いいトークをするには、トピックの幅を絞り、1本の糸でつなげなければならない。つまり、スルーラインをきちんと描かなければならない。的を絞ることで、インパクトは格段に強まる。

強いインパクトを残すためには、十分に深掘りできることだけに的を絞ったほうがいい。