「エッセンシャル思考 最少の時間で成果を最大にする」かんき出版
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「エッセンシャル思考 最少の時間で成果を最大にする」を読んで学びとなった箇所をメモします。
著者:グレッグ・マキューン(Greg McKeown)
シリコンバレーのコンサルティング会社THIS Inc.のCEO。
エッセンシャル思考の生き方とリーダーシップを広めるべく世界中で講演、執筆をおこない、アップル、グーグル、フェイスブック、ツイッター、リンクトイン、セールスフォース・ドットコム、シマンテックなどの有名企業にアドバイスを与えている。
ハーバード・ビジネス・レビューおよびリンクトイン・インフルエンサーの人気ブロガー。
スタンフォード大学でDesigning Life, Essentiallyクラスを開講。
本書および共著書『Multipliers: How the Best Leaders Make Everyone Smarter』は、ともに米国でベストセラー入りしている。
2012年には世界経済フォーラムにより「ヤング・グローバル・リーダーズ」に選出された。
以下、本書からの抜粋です。
推薦の言葉
向上心はときに絶えざるプレッシャーとなってあなたを襲う。
あれもこれも試したい、いいことは全部自分の生活に取り入れたい。
だが、そんなやり方で人は進歩できない。
何事も中途半端に終わるのがオチだ。
この苦境を脱け出すための鍵は、人生を本質的要素だけに絞り込むこと。ダニエル・ピンク(『モチベーション3.0』著者)
PART1
エッセンシャル思考とは何か
エッセンシャル思考とは どのようなものか
エッセンシャル思考は、より多くの仕事をこなすためのものではなく、やり方を変えるためのものである。そのためには、ものの見方を大きく変えることが必要になる。エッセンシャル思考になるためには、3つの思い込みを克服しなくてはならない。
「やらなくては」「どれも大事」「全部できる」──この3つのセリフが、まるで伝説の妖女のように、人を非エッセンシャル思考の罠へと巧みに誘う。エッセンシャル思考を身につけるためには、これら3つの嘘を捨て、3つの真実に置き換えなくてはならない。
「やらなくては」ではなく「やると決める」。
「どれも大事」ではなく「大事なものはめったにない」。
「全部できる」ではなく「何でもできるが、全部はやらない」。
この3つの真実が、私たちを混乱から救い出してくれる。本当に大事なことを見極め、最高のパフォーマンスを発揮することが可能になる。第1章
エッセンシャル思考と非エッセンシャル思考
…瑣末な仕事に追われるばかりで、何の成果も見えてこない。つまり、自分にとって本質的な仕事だけをやれ、というわけだ。それ以外の仕事は、すべて無視しろと。
「この仕事は、自分が今やれることのなかでいちばん重要か?」
いちばん重要だ、と言いきれる仕事しか受けないことにした。本当に重要なことだけをやると決めてから、仕事の質は目に見えて改善された。あらゆる方向に1ミリずつ進むのをやめて、これと決めた方向に全力疾走できるようになったからだ。
「何もかもやらなくては」という考え方をやめて、断ることを覚えたとき、本当に重要な仕事をやりとげることが可能になるのだ。
自分の生活を振り返ってみてほしい。よく考えずに仕事を引き受け、「何でこんなことやっているんだろう」と不満に思うことはないだろうか。相手の機嫌を損ねないためだけに依頼を引き受けていないだろうか。イエスと言うことに慣れすぎて、思考停止していないだろうか?
また、忙しすぎてすり減っていると感じることはないだろうか。働きすぎなのに成果が出なかったり、どうでもいい作業に追われて仕事ができないと感じたことはないだろうか。つねに走りつづけているのに、どこにもたどり着けないような気がしないだろうか?
ひとつでも思い当たることがあるなら、エッセンシャル思考を試してみたほうがいい。エッセンシャル思考とは、まさに「より少なく、しかしより良く」を追求する生き方だ。
…「今、自分は正しいことに力を注いでいるか?」と絶えず問いつづけるのが、エッセンシャル思考の生き方である。
世の中には、ありとあらゆる仕事やチャンスが転がっている。その多くは悪くないものだし、かなり魅力的な話も少なくない。だが、本当に重要なことはめったにない。エッセンシャル思考を学べば、そうした玉石混交のなかから、本質的なことだけを見分けられるようになる。
エッセンシャル思考は、より多くのことをやりとげる技術ではない。正しいことをやりとげる技術だ。もちろん、少なければいいというものでもない。自分の時間とエネルギーをもっとも効果的に配分し、重要な仕事で最大の成果を上げるのが、エッセンシャル思考の狙いである。
エッセンシャル思考とそうでないやり方の違いは、次のページの図のとおりだ。どちらも同じだけのエネルギーを使っている。けれども左側は、あらゆる方向に努力が引き裂かれている。だからどの方向にも、ほんの少しずつしか進めない。
それにくらべて右側は、努力の方向が絞られている。
だから、とても遠くまで進むことができる。エネルギーの使いどころを必要最小限にすることで、いちばん重要なものごとにおいて最大の成果を上げているのだ。
エッセンシャル思考の人は、適当に全部やろうとは考えない。トレードオフを直視し、何かをとるために何かを捨てる。そうしたタフな決断は、この先やってくる数々の決断の手間を省いてくれる。それがなければ、うんざりするほど同じことを問いつづけるはめになるだろう。
エッセンシャル思考の人は、流されない。たくさんの瑣末なものごとのなかから、少数の本質的なことだけを選びとる。不要なものはすべて捨て、歩みを妨げるものもすべて取り除いていく。 要するにエッセンシャル思考とは、自分の力を最大限の成果につなげるためのシステマティックな方法である。やるべきことを正確に選び、それをスムーズにやりとげるための効果的なしくみなのだ。エッセンシャル思考は、自分の選択を自分の手に取り戻すための道のりである。それはあなたに、これまでとはくらべものにならないほどの成功と充実感を与えてくれる。結果だけでなく、日々のプロセスを心から楽しめるようになる。
自分で優先順位を決めなければ、 他人の言いなりになってしまう。
人の決断、というものに私が強い興味を持ったのも、これがきっかけだった。どうして人は、大事な場面で決断を誤ってしまうのだろう。なぜ自分の能力をもっと発揮できないのだろう。自分や周囲の力を最大限に引き出すような生き方をするには、どうしたらいいのだろう?優秀な人ほど成功のパラドックスに陥りやすい
第1段階
目標をしっかり見定め、成功へと一直線に進んでいく。第2段階
成功した結果、「頼れる人」という評判を得る。「あの人に任せておけば大丈夫」と言われ、どんどん多様な仕事を振られるようになる。第3段階
やることが増えすぎて、時間とエネルギーがどんどん拡散されていく。疲れるばかりですべてが中途半端になる。第4段階
本当にやるべきことができなくなる。成功したせいで、自分を成功に導いてくれた方向性を見失ってしまう。
なんとも奇妙な話である。極論すれば、成功を求めることによって、人は失敗してしまうのだ。成功した人は何でもやろうとしすぎて、そもそも何をやっていたかを忘れてしまう。…ジム・コリンズは、著書『ビジョナリーカンパニー3 衰退の五段階』のなかで、成功した企業がいかにして衰退するかを分析した。コリンズによると、失敗の主な理由は企業が「規律なき拡大路線」に陥ったことだと言う。つまり、やたらと多くを求めすぎたのだ。
私たちはこれまでになく多くの選択肢を持つことになり、その数に圧倒
れている。何が大事で何がそうでないかを見分けられなくなっている。心理学で「決断疲れ(5)」と呼ばれる状態だ。選択の機会が増えすぎると、人は正しい決断ができなくなるの
オーストラリアのホスピスで看護師をしていたブロニー・ウェアは、死を迎える患者たちが最後に後悔していることを聞き、記録しつづけた。その結果、もっとも多かった答えは「他人の期待に合わせるのではなく、自分に正直に生きる勇気がほしか
た(6)」
ない。不要なことを的確に見定め、排除していくことだ。そのためには、無意味な雑用を断るだけでなく、魅力的なチャンスを切り捨てることも必要になる(7)。やることを減らし、人生をシンプルにして、本当に重要なことだけに集中するのだ
人生も仕事も、クローゼットと同じだ。必要なものと不要なものを区別できなければ、どうでもいいことで埋めつくされてしまう。捨てるしくみをつくらないかぎり、やることは際限なく積み上がっていくばかりだ。 そうならないために、エッセンシャル思考のクローゼット整理法を紹介しよう
1 評価する 「いつか着る可能性があるだろうか?」という考え方はやめよう。 そのかわりに、「大好きか?」「すごく似合うか?」「しょっちゅう着るか?」と考えよう。もしも答えがノーなら、それは不要なものだ。 人生や仕事に置き換えると、こういう問いになる。 「これをやったら、ほかの何よりも重要な成果が得られるだろうか?」 本書のPART2で、その問いに答える方法を考えていこう。 2 捨てる クローゼットの洋服を「いるもの」と「いらないもの」に分けたとしよう。さて、「いらないもの」を今すぐ捨てる勇気があるだろうか? 「やっぱり、もったいない」と感じるのも無理はない。心理学の研究によると、人はすでに持っているものを、実際よりも高く評価する傾向があるという。一度買ってしまうとなかなか捨てられないのはそのせいだ。そんなときは、こう考えてみよう。 「もしもこれを持っていなかったら、今からお金を出して買うだろうか?」 すると、知らず知らずバイアスがかかっていたことに気づくはずだ。 人生や仕事においても、いちばん重要ではないとわかっているのに、なかなか捨てられないことがある。捨てるには、努力が必要なのだ。 本書のPART3では、不要なものを捨てるテクニックを紹介する。ただ捨てるだけでなく、捨てることで自分の評価が高まるようなやり方を身に
けよう。 3 実行する クローゼットをきれいに保つには、日頃から整理整頓できるしくみが必要だ。いらないものを入れるための特大サイズの袋を用意して、どうしても必要なもの以外はそこに入れよう。定期的にその袋を持って古着屋に行き、買いとってもらう習慣をつけよう。 人生や仕事でも、選び抜いた行動を実行するためには、やりやすい習慣をつけることが必要だ。意志の力をふりしぼらなくてすむように、行動をしくみ化しよう。本書のPART4では、挫折知らずのしくみづくりについて検討する。
本書を読めば、他人の期待に振りまわされず、自分に正直に生きる方法が見つかるだろう。より効率良く生産的になり、仕事もプライベートもこれまでよりずっと充実するはずだ。 大事なものを知り、不要なものを捨て、決めたことをスムーズにやりとげる。人生のあらゆる場面で、仕事や用事を正しく「減らす」。そのためのやり方を紹介しよ
PART1 エッセンシャル思考とは何
まず、エッセンシャル思考の基礎となる3つの考え方を紹介する。エッセ
ンシャル思考を身につけるには、これらの基本を理解することが不可欠だ。 1 選択 私たちは、時間とエネルギーの使い道を選ぶことができる。だからこそ、トレードオフを引き受けることも必要になる。 2 ノイズ 世の中の大半のものはノイズである。本当に重要なものはほとんどない。だから、何が重要かを正しく見極めなくてはなら
3 トレードオフ すべてを手に入れることはできない。何もかもやるなんて不可能だ。何かを選ぶことは、すなわち何かを捨てること。「どうやって全部終わらせようか」と考えるのをやめて、「どの問題がいちばん重要か?」と考えよう。 これらの基本を十分に理解したなら、エッセンシャル思考を理解することは難しくない。以降の章で紹介する考え方やテクニックも、自然に覚えられるはず
PART2 見極める技術 エッセンシャル思考の人は、そうでない人よりも多くの選択肢を検討する。逆説的だが、それが事実だ。何でも無批判に引き受ける人は、何も検討しない。だがエッセンシャル思考の人は、あらゆる選択肢を検討したうえで、重要なことにイエスと言う。軽い気持ちでなく、本気でとことんやるからこそ、最初の見極めに力を入れるのだ。 選ぶ基準を明確にすれば、脳のサーチエンジンは厳密な結果を返してくれる(8)。「良いチャンス」で検索すると、なんとなく良さそうな情報が延々と出てくるだろう。そこで検索オプションとして、次の3つの問いをつけ加える
「自分は何が大好きか?」 「自分は何がいちばん得意か?」 「世の中の大きなニーズに貢献できるのは何か?」 すると、検索結果は絞られてくるはずだ。 なんとなく良さそうなことを眺めている暇はない。考えるべきは、どうすれば最高の成果が出せるかということだ。正しいことを、正しいときに、正しい方法でやる。そのためには、基準を厳しくするしかない
PART3 捨てる技術 周囲に認められたいという思いから、何でも引き受けてしまう人は多い。だが最高の成果を上げるためには、断ることも必要だ。ピーター・ドラッカーはこう言っている。 「できる人は『ノー』と言う。『これは自分の仕事ではない』と言えるのだ(9)」 不要なことを捨てるためには、誰かにノーを言わなくてはならない。しかも、頻繁に。なるべく相手を傷つけず、うまく頼みを断るためには、勇気と思いやりが不可欠だ。頭で考えるだけではうまくいかない。上手に気持ちを動かすにはどうするか。PART3「捨てる技術」では、そうした面についても考えてみる。 すべてを手に入れることが不可能なら、何かを捨てるしかない。では、誰がそれを決めるのか? もしも選択の権利を放棄するなら、他人があなたの人生を決めることになる。自分で「これを捨てる」と決めなければ、誰かがあなたの大切なものを捨ててしまうだろう。 不要なものを捨てれば、必要なことをするための余裕ができる。実際にどうやって必要なことを実行するかは、次のステップで考えていこう。 PART4 しくみ化の技術 何かをやりとげるには、強い意志が必要だとよく言われる。仕事のプロジェクトを終わらせるにしても、夫や妻の誕生日パーティーを開くにしても、がんばらなければ実現できないと考えられているようだ。 だが、エッセンシャル思考のアプローチは違う。努力と根性でやりとげるのではなく、すんなり実現するようなしくみをつくるのだ。無駄な作業に費やす時間が減る分、じっくりと計画を立てて、事前に障害を取り除くことができる。 これら3つの技術(見極める、捨てる、しくみ化する)は、ひとつの輪のようにつながり合っている。日頃からこのサイクルをまわしていけば、得られる成果はどんどん大きくなっていくだろ
まだ迷っているなら、人生がいかに短いかを考えてみてほしい。残されたわずかな時間を、いったいどのように使いたいのか。 メアリー・オリバーの有名な詩の一節を引用しよう。 「教えてください、あなたは何をするのですか/その激しくかけがえのない一度きりの人生で(12)」 いったん読むのをやめて、この問いをじっくり考えてみてほしい。 そして、今ここで、エッセンシャル思考の生き方を選ぶと決意してほしい。
たくさんのどうでもいいことより、数少ない本質的なことを全力で追求しようではないか。そのためのしくみを学び、もっと研ぎ澄まされた生き方をしようではないか
エッセンシャル思考とは、「より少なく、しかしより良く」を貫く生き方だ。それは未来へ向かうイノベーションである
私は人生の大きな教訓を学んだ。 「ある種の努力は、ほかの努力よりも効果が大きい
問題は、時間とお金ではなく、時間と成果の関係なのだ。 「この仕事で、もっとも価値のある成果は何か?」と私は考えた
努力は大切だ。だが、努力の量が成果に比例するとはかぎらない。がむしゃらにがんばるよりも、「より少なく、しかしより良く」努力したほうがいい
「より少なく、しかしより良く」という考え方に慣れるのは、思ったほど簡単なことではない。たいていの人は「もっと努力しろ、もっともっと」と長年言われつづけてきたはずだ。だが努力の量を増やしても、いつか限界がやってくる。それ以上努力しても成果が増えないどころか、逆に成果が減ってしまう。「努力した分だけ報われる」というのは、ただの幻想だ。残念ながら、世の中はそこまで単純ではない
重要な少数は瑣末な多数に勝る 「80対20の法則(パレートの法則)」という言葉を聞いたことがあるだろうか。19世紀末に経済学者のヴィルフレド・パレートが提唱した法則で、成果の80%は20%の努力に起因するという説だ
やがて1951年になると、品質管理の父と呼ばれるジョセフ・M・ジュランがこの法則を拡張し、「決定的に重要な少数の法則」を唱えた(2)。 ジュランは品質管理の研究をするうちに、問題のごく一部を改善することによって、全体の品質が大きく改善されることに気づいた
「重要な少数」が「瑣末な多数」に勝るという考え方は、広く世の中全般に応用できる。『人生を変える80対20の法則』などの著作で有名なリチャード・コッチは、日々のあらゆる場面にこの法則を当てはめてみせた(4)。どんなことでも、80対20の法則で説明できると言うのだ。 たとえば、世界一の投資家ウォーレン・バフェット。彼は「われわれの投資方針は、ほぼ無頓着に近い」と語っている(5)。少数の投資先だけを相手にし、一度買ったら長いあいだ保有しつづけるのだ。バフェットの知恵を集めた本『史上最強の投資家バフェットの教訓』では、次のように解説されている。 「バフェットは若い頃、数百の正しい決断をすることは不可能だと悟った。そこで絶対に確実と思われる投資先だけに限定し、そこに大きく賭けることにした。彼の資産の9割は、たった10種類の投資によるものだ。手を出さないという判断が、その富をもたらしたのである(6)
要するにバフェットは、本質的な少数のものだけを選びとり、その他多くのチャンスにノーを言ったのだ(7)
努力の量と成果が比例するという考え方を捨てたとき、エッセンシャル思考の大切さが見えてくる。 多数の良いチャンスは、少数のものすごく良いチャンスに遠く及ばない。そのことを理解し、数かぎりないチャンスのなかから「これだけは」というものを見つけなくてはならない。本当に重要なことにイエスと言うために、その他すべてにノーと言うのだ
エッセンシャル思考の人は、たっぷりと時間をかけて選択肢を検討する。やるべきことを正しく選べば、その見返りはとてつもなく大きいことを知っているからだ。エッセンシャル思考の人は、多くをやらなくてすむように、多くを吟味するのである。 仕事のできる人が往々にして壁にぶつかるのは、「全部やらなくては」という思考から脱け出せないためだ。だがエッセンシャル思考を身につければ、本当に重要なものを正しく見分けることができる
第4章 トレードオフ──何かを選ぶことは、何かを捨てること 戦略には選択とトレードオフがつきものだ。 独自性を意図的に選びとるのである。 ──マイケル・ポーター(経営学者
著名な経営学者マイケル・ポーターはこうコメントしている。 「戦略的ポジションは、別のポジションとのトレードオフなしには維持できない(3)
何かに「イエス」と言うことは、その他すべてに「ノー」と言うことなの
だ。 何かを選ぶことは、何かを捨てること。この現実を受け入れられない人は、コンチネンタル航空と同じ運命をたどることになる。中途半端に片足ずつ突っ込んで、あれもこれも失うことになるのだ
聞こえのいい言葉だ
羅列されているだけでは優先順位がわからない。これらの価値が相容れない状況に置かれたとき、どうやって決断するかが見えてこない
「顧客、従業員、株主の皆様をもっとも大切に考えます」というステートメントも見かける。みんなを優先するのは、誰も優先しないのと同じだ。いざというときに顧客と従業員のどちらを大事にするのか、それが見えてこない
私は別に、ハーバード大学に合格するのが大事だと言っているのではない。目標は何であろうとかまわない。この夫婦のすごいところは、息子にとっていちばん重要なことを見定め、それ以外のことを切り捨てた決断力だ
エッセンシャル思考は、成功するために家族や健康を犠牲にするやり方ではない。だが、この問いが真実をついていることも事実だ。家族、友人、健康、仕事。それらの利害が衝突したとき、私たちはこう問わなくてはならない。 「自分はどの問題を引き受けるのか?」 トレードオフを無視したり非難したところで、何もいいことはない。トレードオフとは、戦略的に、そして慎重に選びとるべきものなの
多数の瑣末なことのなかから、 少数の重要なことを見分ける エッセンシャル思考の人は、そうでない人よりも多くの選択肢を検討する。 逆説的だが、それが事実だ。 非エッセンシャル思考の人はあらゆる話に反応し、何でもとりあえずやってみる。 だから多くのことに手を出すが、すべて中途半端な結果しか得られない。 それに対してエッセンシャル思考の人は、何かに手を出す前に、幅広い選択肢を慎重に検討する。そして「これだけは」ということだけを実行する。行動を起こす数は少ないが、やると決めたことについては最高の結果を出す。 ここからのPART2では、数ある選択肢のなかから本質的なものを見極めるための技術を紹介する
本当に重要なものごとを見極めるために必要なことは5つ。 じっくりと考える余裕、情報を集める時間、遊び心、十分な睡眠、そして何を選ぶかという厳密な基準だ
忙しく動きまわることを有能さの証だと思っている人は、考えたり眠ったりする時間をなるべく減らそうとする。しかし本当は、立ち止まる時間こそが、生産性を高めるための特効薬だ。立ち止まる時間は無駄な寄り道ではなく、前に進むための最短コースを教えてくれるのである。 エッセンシャル思考の人は、なるべく時間をかけて調査・検討し、意見を交わし、じっくりと考える。そうすることで初めて、本当に重要なものを見極めることが可能になるのだ
忙しすぎて考える時間もないなら、それは仕事が多すぎる。シンプルな理屈だ。 多数の瑣末なことのなかから少数の重要なことを見分けるためには、誰にも邪魔されない時間が不可欠だ。ただし、この忙しい世の中で、そんな余裕が自然に生まれるわけがない。あえて時間をとらなければ、誰も考える余裕など与えてくれない
何事も、まず選択肢を調べないことには、本質を見極めることはできない
集中とは、単にひとつの問題を考えつづけることではない。エッセンシャル思考における集中とは、100の問題をじっくり検討できるだけのスペースを確保することだ。それは目の焦点を合わせる作業に似ている。ひとつのものに固執せず、つねに視野全体を把握して焦点を調整するのである
「ジャーナリズムとは、単に事実を繰り返すことではなく、核心を見抜くことだと気づきました。いつ誰が何をしたか、それだけでは足りません。それがどういう意味を持ち、なぜ重要なのかを理解しなくてはならないんです」 エフロンはそう
あらゆる事実には、本質が隠されている。すぐれたジャーナリストは、情報の断片を調べ、それらの関係性を発見する。部分の集まりから全体像をつくりあげ、人びとに通じる意味を付与する仕事だ。
ささいなことに気をとられすぎると、大局を見失う。仕事や生き方でも同じだ。何をするときにも、すぐれたジャーナリストのように、本質を見抜く目を持たなくてはならない。 要点に目を向ける訓練をすると、これまで見えなかったものが見えてくる。点の集まりではなく、点同士をつなげる線に気づくことができる。 単なる事実に反応するかわりに、その本当の意味を見抜くことが可能になるのだ
日々出会う情報はあまりに膨大で、とてもすべてを調べることはできない。吟味すべき情報を見分けるためには、どんどん飛び込んでくる情報や選択肢をフィルタリングするしくみが必要だ。 先日、有名ジャーナリストのトーマス・フリードマンに会い、不要なノイズの中から本質を見抜く方法について話し合った。彼はそのとき、ニューヨーク・タイムズ紙に連載しているコラムのためのランチミーティングを終えてきたところだった。ランチの場にいたある人は、フリードマンの様子を見て、どうも上の空なのではないかと訝しんだらしい。だが、彼はしっかり耳を傾けていた。すべての会話を把握しつつ、本当に興味深い話題を待っていたのだ。いったんおもしろい話題が出てくると、彼は次々と質問し、ストーリーの本質に深く踏み込んでいった。 すぐれたジャーナリストは、普通の人には聞こえないものを聞くことができる、とフリードマンは言う。ランチミーティングで彼が本当に聞いていたのは、語られる内容ではなかった。語られなかったことに、耳を傾けていたのだ。 エッセンシャル思考の人は、目と耳がいい。すべてに注意を向けることが不可能だと知っているので、話の空白を聞き、行間を読む。映画『ハリー・ポッター』シリーズのハーマイオニーは、それをこう言い表している。 「私ってすごく論理的なのよ。だから無関係な細部に気をとられないで、みんなが見過ごすものを見抜けるの(3)」 非エッセンシャル思考の人は、耳を傾けてはいるけれど、いつも何かを言う準備をしている。無関係な細部に気をとられ、瑣末な情報にこだわってしまう。声の大きい意見は聞こえるが、その意味を取り違える。自分がコメントすることばかり考えていて、話の本質がつかめない。 その結果、彼らは大筋を見失う。作家C・S・ルイスに言わせれば、「洪水の最中に消火器を振りまわす」状態になるのである(4)。
私たちの最大の資産は、自分自身だ。 自分への投資を怠り、心と体をないがしろにすると、価値を生み出すための元手がなくなってしまう。自分という資産を守らなければ、世の中のために働くこともできないのだ
その最大の原因は、睡眠不足であ
たっぷり休養することで、1時間あたりの練習効果を最大限に高めているの
。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は「睡眠は成功者の新たなステータスシンボル」という記事で、こうした起業家たちを紹介している(4)絶対にイエスだと言いきれないなら、それはすなわちノーである」 まさにエッセンシャル思考らしい発言だ。選択肢を検討するときには、つねにこの基準で考えたほうがいい
「絶対やるべきこと」を決めるのは、エッセンシャル思考の第一歩だ。それができたら、次は「やらなくてもいいこと」をきっぱりと捨てなくてはならない
PART3では、本当に重要なことをやりとげるために、不要なものごとを 「捨てる」技術を紹介しよう
捨てるべきものを問うとき、自分の優先事項がはっきりと見えてくる。自分の本当の使命が明らかになり、個人だけでなく組織全体のために最高の仕事ができるようになる。 仕事や人生の決定打となるブレイクスルーは、不要なものを切り捨てることから始まるのだ
目的が明確でなければ、人を動かすことはできない。目的もわからない仕事では、やる気が出ないからだ
目的が明確でないとき、人はどうでもいいことに時間とエネルギーを浪費する。これまで数多くの会社を見てきたが、その弊害は大きく2つのパターンとして表れてくるようだ。
パターン1 社内政治が蔓延する まず最初のパターンとして、上司の気を引くための社内政治が蔓延する。仕事のゴールが見えず、どうすれば勝てるかわからないので、「上司の歓心を買う」という不毛なゲームに逃げ込んでしまうのだ。 その結果、本来なら仕事に注ぐはずの時間とエネルギーは、表面的な自己演出やご機嫌とりに費やされる。不要なだけでなく有害で、生産性を著しく下げる行動だ
パターン2 何でも屋になる もうひとつのパターンは、リーダーの求心力がなくなり、各自がバラバラに動き出すことだ。会社の明確な方向性が見えないので、それぞれ目先の利益のために行動するようになる。といっても悪気があるわけではないし、個人レベルでは本当に重要な仕事をしているのかもしれない。だが各自が別々の方向に進んでいたら、チーム全体としてどこにもたどり着けない。1歩進むたびに5歩下がるというありさまだ。 同じことは仕事以外にも当てはまる。あまりに多くのことに少しずつ手を出していたら、本質的なゴールにたどり着けない。努力の方向性がバラバラで、成果が足し算されないからだ。
全体の目的と個々の役割がとことん明確になっていれば、チームは驚くほどの力を発揮できる。エネルギーが同じ方向に向かい、相乗効果が生まれるからだ。 では、どうすれば会社や個人の目的を明確にできるのだろうか。 ひとつのやり方は、「本質目標」を決めることだ。 本質目標を決める 本質目標について理解するための近道は、それが何でないかを知ることだ(2)。2×2のマトリックスを使って説明しよう。
の力を最高に発揮できる行動を見定めなくてはならない。そのためには、タフな問いに答えることが必要だ。トレードオフを直視し、本質から外れたものごとを断固として切り捨てなくてはならない。 厳しいが、やるだけの価値はある。本当に明確な目標だけが、自分や組織の力を最大限に引き出し、真にすぐれた成果を可能にしてくれるのだから
急に決断を迫られたとき、その場で正しく本質を選ぶのは難しい。自分にとって本当に重要なことを明確にしないかぎり、私たちは葛藤に対して無力なままだ。次々とやってくるタフな選択から私たちを守ってくれるのは、「自分にとって本当に重要なのはこれだ」という確信である。 ローザ・パークスの場合、人種差別に対する道徳的判断が彼女に強さを与えてくれた。スティーブン・コヴィーの場合、娘と楽しい夜を過ごしたいという明確な気持ちだった。何が本当に重要かを知っていたから、それ以外のことに「ノー」と言えたのだ
どうすれば上手に断ることができるのだろうか。 いくつかのコツと実例を紹介しよう
◆判断を関係性から切り離す 誰かに何かを頼まれたとき、私たちはそれを関係性の問題だと思ってしまう。頼みを断ることが、相手を拒絶することだと感じてしまうのだ。この2つを分けて考えなくてはならない。 関係性から切り離して考えたとき、判断はより明確になり、それを伝える勇気と思いやりも生まれてくる(9)
◆トレードオフに目を向ける ここでイエスと言ったら、自分は何を失うのだろうか。そのトレードオフに目を向ければ、中途半端なイエスは言えなくなる。どんな判断をするときも、機会コストを忘れてはならない。「もしもこれを選んだら、別のもっと価値あることができなくなる」ということだ。全部やってみよう、という非エッセンシャル思考の罠にはまってはいけない。すべてをやることは不可能だ。失うものを冷静に計算し、納得できる答えを出そう
「サンクコストバイアス」とは、すでにお金や時間を支払ってしまったという理由だけで、損な取引に手を出しつづける心理的傾向のことだ。「ここでやめたら今までの投資が無駄になる」と思うあまりに、望みの
わざわざ買おうと思わないようなものでも、いったん所有してしまうと失うのが怖い。「授かり効果」という心理的バイアスのせいだ
自分の失敗を認めたとき、初めて失敗は過去のものになる。失敗した事実を否定する人は、けっしてそこから脱け出せない。 失敗を認めるのは恥ずかしいことではない。失敗を認めるということは、自分が以前よりも賢くなったことを意味するのだから。
いつもやっているからという理由でそれをやめられない傾向を、「現状維持バイアス」と呼ぶ
当たり前のようにそこにあるものを、人は無条件に受け入れがちだ。このバイアスから自由になるために、ゼロベースというテクニックを使おう
ゼロベースの考え方を、自分の仕事や生き方に当てはめてみよう
惰性でつづけていることは、すぐにやめるべきだ
本格的に撤廃する前に、簡単な形で試してみるの
逆プロトタイプのやり方は簡単。今やっていることを試験的にやめてみて、不都合があるかどうかたしかめるのだ
何かをやめることはそう簡単ではない。やると決めたことをキャンセルするのは、やはりどうしたって気まずいものだ。だが、不本意なことをやりつづけていても、誰のためにもならない。 さまざまな心理的バイアスにとらわれず、きっぱりと「やめる」スキルを身につければ、人生はもっとシンプルになるはずだ
第6章で、すぐれたジャーナリストは部分の集まりから全体像をつくるという話をした。意味のある全体像ができあがったら、次のプロセスは余分なものをすべて切り捨てることだ。すぐれた編集技師になって、自分の仕事や生き方を完璧に編集しよう
できる。編集の技術は、ただ減らすことにあるのではない。減らしながら、価値を増やすのだ。すぐれた編集技師は、余分なものを削ることによって、そのプロットや世界観やキャラクターをいっそう際立たせる。 同じように、自分の仕事や生き方を編集すれば、その成果をよりいっそう高めることができる。本当に重要なことにエネルギーを集中できるからだ。余分なものを削ってこそ、重要なものを生かす余地が生まれる
編集の4つの原
1 削除する 編集の基本は、あいまいでわかりにくい要素を排除し、観客や読者の混乱を防ぐことだ
余分な選択肢を断ち切れば、すんなりと決断できる。かなり魅力的な選択肢だとしても、混乱のもとになるものはすべて取り除いたほうがいい
2 凝縮す
言葉を凝縮するとはつまり、言いたいことを最大限明確かつ簡潔に言うことだ
3 修正する 編集の仕事は、削除と凝縮だけではない。間違いを直すのも大事な役目だ
まで修正することが可能になる。 仕事や生き方でも、自分の本質的な目標を明確にしておけば、それに合わせて行動を修正できる。自分の行動はきちんと本質目標に向かっているだろうか、と振り返ってみてほしい
4 抑制する
抑制すべきところを知っておくと、人生はもっとうまくいく。 反射的に手を出すのをやめて、何もしないことを選ぶのだ。
最善の結果を得るためには、こまめに行動を振り返り、小さな編集を積み重ねたほうがいい。 エッセンシャル思考で生きるということは、削除と凝縮と修正を、日々の習慣にすることだ。まるで呼吸するように、自然に生き方を編集しよう
エッセンシャル思考の人は、境界線を上手に利用する。一線を引くことで自分の時間を守り、他人からのよけいな干渉を防ぐのだ
何かをやりとげるには、2種類のアプローチがある。 非エッセンシャル思考の人は、努力と根性でやりとげようとする。 だがエッセンシャル思考の人は、なるべく努力や根性がいらないように、自動的にうまくいくしくみをつくる
しくみ化
いったんやるべきことを決めたら、それを無意識に実行できるようにしておくのだ。
の苦労もなくスムーズに正しい行動ができるようにしておこう
非エッセンシャル思考の人は、条件に恵まれたケースを前提として予定を立てようとする。希望的観測に従って生きているのだ。「
エッセンシャル思考の人は違う。思わぬことは起こるものだと知っているから、あらかじめ何かが起こることを想定して予定を立てる。万が一に備えてバッファをとり、予定外のことがあってもペースを取り戻せるようにしておくのだ。
希望的観測
ジム・コリンズとモートン・ハンセンの『ビジョナリーカンパニー4 自分の意志で偉大になる』のなかで紹介されている。コリンズらは苦難にも負けず成功する企業の秘密を探るため、2万社以上を対象に調査をおこなった。そのうち、苦難を乗り越えて圧倒的な成長を手に入れた企業が7社あった。 この7社は、やってくる苦難を予測していたわけではない。不測の事態が起こるという事実を知っていただけだ。うまくいくことを前提にせず、何が起こってもいいように徹底的に準備をしていたのである(5)。
エッセンシャル思考の人は、すべてが思いどおりにはいかないことを知っている。未来が予測不可能であるという現実を受け入れている。だから、不測の事態が引き起こすダメージをできるだけ緩和するために、あらかじめバッファを計画に組み込んでおくのだ。
非エッセンシャル思考の人は、場当たり的に問題に対処する。困ったらそれを直し、また別のところが困ったらそれを直すといった具合だ。
エッセンシャル思考の人は目の前の症状に惑わされず、どこが本当の問題なのかを見極めようとする。何が妨げになっているのかを特定し、もっとも効果的に処置をする。非エッセンシャル思考の人は応急処置でつぎはぎだらけになっていくが、エッセンシャル思考の人は本当に必要なところに一度だけメスを入れる。これは問題解決にかぎらず、最小限の努力で最大限の結果を得るための普遍的なやり方である。
どの努力が成果を生み、どの努力がそうでないかについて、私たちは注意を払うことを忘れがちだ。あるいはそれを意識していても、やはり増やすことに気をとられて減らすことを考えない。売上を伸ばすために営業人員を増やし、商品を良くするために開発者を増やすといった調子だ
エッセンシャル思考の場合、人やお金や時間を増やすかわりに、制約や障害を取り除くことを考える。そのための3つのコツを紹介しよう。 1 めざすことを明確にする めざす成果が明確でなければ、何をすべきかはわからない。最終的にどのような状態であるべきかがわからなければ、そこまでの道筋も見えてこない。だからまず最初に、こう自問しよう。 「最終的にどこへたどり着きたいのか?」
1 めざすことを明確にする
2 ボトルネックを特定する めざすべきことがわかったら、仕事にとりかかる前にいったん立ち止まって考えよう。 「この仕事をやりとげるうえで、邪魔になるものは何か?」 仕事の完成を邪魔するものがあれば、すべてリストアップしよう。たとえば情報が足りないとか、疲れているとか、完璧にしないと気がすまないとか、そういったことだ。 リストができたら、優先順位をつけよう。「これを取り除けばほかの問題も解決するような、大きな障害は何か?」と考えるのだ。 ボトルネックを特定するうえで注意しておきたいのは、生産的な行動が大きな邪魔になる場合もあるということだ。メールで情報共有したり、完成度を高めるために書き直したり──そういった前向きな行動が、今回の目標を達成するうえでのボトルネックになるかもしれない(目標は草稿をつくることであって、美しい完成版ではない)。目標達成を邪魔する行動は、どれほど前向きな行動であっても疑ってかかる必要がある。 目標達成を邪魔する要素はいくつもあると思うが、最優先で解決すべきことはひとつだけだ。手当たり次第にいろいろ手を出したところで、肝心のボトルネックが残っていたら何の意味もない。
3 邪魔なものを取り除
エッセンシャル思考の人は、もっと現実的だ。何でもいっぺんにやろうとせず、小さな成功を積み重ねる。見た目
心理学の研究によると、人間のモチベーションに対してもっとも効果的なのは「前に進んでいる」という感覚である。小さくても前進しているという手応えがあれば、未来の成功を信じられる。そのまま進みつづけようという力になる。 ハーバード・ビジネス・レビューの有名な記事『モチベーションとは何か』のなかで、心理学者のフレデリック・ハーズバーグは人の意欲を高める2つの主要因が「達成」と「達成が認められること」であると説いた(4)。
力
になる。 ハーバード・ビジネス・レビューの有名な記事『モチベーションとは何か』のなかで、心理学者のフレデリック・ハーズバーグは人の意欲を高める2つの主要因が「達成」と「達成が認められること」であると説いた(4)
アマビルとクレイマーは「日々のささやかな進歩」こそがやる気を引き出し、高いパフォーマンスを可能にすると結論づけた
最初から高望みをして途中で挫折したら、何も残らない。少しずつでもいいから結果を出し、地道な成功を積み重ねたほうがずっと生産的だ。成功は次の成功を生み、やがてそれらは飛躍的な達成へとつながっていく
スタンフォード大学の元教授であり著名な教育者であったヘンリー・B・アイリングは、次のように述べている。 「人や組織の成長を長年見守ってきましたが、大きな進歩を望むなら、日々何度も繰り返す小さな行動にこそ着目すべきです。小さな改善を地道に繰り返すことが、大きな変化につながるのです(6)」
「完璧をめざすよりまず終わらせろ」という言葉があ
(
これは別に品質を無視しろという意味ではない。瑣末なことに気をとられず、本質をやりとげろという意味だ
スタートアップ界隈ではMVP(minimum viable product:実用最小限の製品)という言葉もよく使われる(11)。「顧客にとって有用なことを最低限実現するには?」と考え、よけいなことをしないというやり方だ。
これらを応用し、「実用最小限の進歩」というやり方を取り入れてみよう。「重要なことをやりとげるために、最低限意味のある進歩は何か?」と考えるのだ。 この本の執筆にも「実用最小限の進歩」を利用している。まだ書きはじめる前の構想段階では、アイデアの切れ端をツイッターで公開することを最小限の進歩に定義した。もしも反響があれば、それをブログ記事に発展させた。この小さな進歩の繰り返しによって、自分のアイデアと人びとのニーズとの接点を少しずつ探っていったのだ
小さく始めて、日々の小さな進捗を評価する。それを何度も何度も繰り返す。最初から壮大な目標を立てるより、そのほうがずっと遠くまで行ける。 小さな達成を繰り返せば、目標までの道のりは楽しく、満足感に満ちたものとなる
第18章 習慣──本質的な行動を無意識化する 決まりきった行動は、賢い人の場合、 高い志のあらわれである。 ──W・H・オーデ
習慣は妨害に打ち克つための最強の武器だ。習慣がなければ、数知れぬ誘惑に勝つことは難しい。だが本質的な目標に向かう行動を習慣づけてしまえば、無意識のうちに目標を達成できる
いる。習慣のしくみを簡単に説明すると、同じことを複数回実行することによって、ニューロン(神経細胞)同士のあいだに新しい結びつき(シナプス)が生まれる。何度も反復することで結びつきは強化され、情報の伝達がスムーズになる
どんなことも、繰り返し実行すればどんどん簡単になっていく。繰り返すことで習慣が確立され、行動が脳に刷り込まれるからだ。 エッセンシャル思考も同じだ。練習を重ねれば、どんどん簡単になっていく
チャールズ・デュヒッグは、著書『習慣の力』についてのインタビューで次のように語っている。 「この15年間で習慣についての研究が進み、習慣を変える方法もわかってきました。研究者によると、あらゆる習慣には『トリガー』『行動』『報酬』の3つの要素があります。トリガーとは、ある行動を自動的に呼び起こすためのきっかけです。次に行動がきます。これは肉体の動作のほかに、感情や思考も含みます。そして最後に、報酬があります。この習慣を次も繰り返したいと思うような、ごほうびです。この3要素のループが繰り返されることによって、トリガーと報酬はより強く脳に刷り込まれ、行動はより自動的になっていきます(8)」 つまり悪い習慣を変えるためには、行動自体よりも、それを引き起こすトリガーに着目すべきだということになる。トリガーを見つけて、別の有益な行動と結びつけてやればいいのだ。
悪い習慣を変えるためには、行動自体よりも、それを引き起こすトリガーに着目すべきだということになる
トリガーを見つけて、別の有益
行動と結びつけてやればいいのだ
新しい行動をやりつづけていれば、トリガーと行動の新しい結びつきがだんだん脳に定着していく。やがて新しい行動が習慣化し、無意識のうちに新しい行動が引き起こされるようになるはずだ
新たな習慣をつくりたいなら、古いトリガーにこだわる必要はない。新しいトリガーをつくって、有意義な行動を呼び起こせばいい
新しい習慣をつくるというアイデアはとても魅力的なので、悪癖を片っ端からいい習慣に変えたいと思うかもしれない。ただし、全部いっぺんに取り組もうとしてもうまくいかない。小さく始めて、少しずつ進んでいったほうがいい。
習慣を変えるのは、それほど簡単なことではない。長年の癖は脳の奥までしみこんでいるし、強い感情と結びついている。一瞬にして変わるほど単純な話ではない。 どんなスキルもそうだ。新しく身につけるには時間がかかる。それでも練習をつづければ、やがて体がそれを覚え込み、一生もののスキルになってくれる。 習慣についても同じことだ。いったん習慣を確立すれば、今後は何の苦もなくそのメリットを享受しつづけられることだろう
非エッセンシャル思考の人は、過去や未来に気をとられるあまり、今を生きることを忘れている。いつも心ここにあらずの状態で、目の前のことに集中できない。 一方、エッセンシャル思考の人は今ここに集中する。クロノスよりも、カイロスを生きる。昨日や明日ではなく、今この瞬間に何が大事かを考えるのだ。
◆未来を頭の中に抱えない 頭のなかに未来のことが詰まっていると、今この瞬間に集中できない。先ほどの例でいえば、私は今すぐやることを決めたあと、「今すぐ必要ないけれど重要なこと」をリストアップすることにした。刺激的な1日のあとで、やりたいことのアイデアがひしめいていたのだ。 私は日記の新しいページを開き、「この先やりたいことは何か?」に対する答えを書いた。うまく形になっていなくてもいいから、とにかく頭の中にあるものを紙に吐き出していった。 紙に書くことには、2つの効果がある。ひとつは、有用なアイデアを忘れないこと。そしてもうひとつは、「覚えているうちに何かやらなくては」という漠然とした焦りを感じなくてすむことだ。 ◆優先順位をつける 今すぐやるべきことのリストができたら、優先順位の番号を振って、順番に片づけていこう。一度にひとつのことに集中し、終わったら線を引いて消す。 おかげで私は今すぐやるべきことをすべて手際良く終え、安心して眠りにつくことができた。
ベトナム出身の禅僧ティク・ナット・ハンは、世界でもっとも穏やかな人だ。彼の生きる時間は、古代ギリシャ人の言うカイロスである。彼はそれを「マインドフルネス」と呼ぶ
自分の日々を振り返り、カイロス的な瞬間を見つけよう。それを日記に書きとめて、どんなときにそうなるかを分析しよう。「今、ここ」を感じられるきっかけがわかったら、その体験を再現できるように練習してみよう。 カイロスを感じられるようになれば、あなたのパフォーマンスは何倍にも高められ、同時に大きな喜びを知ることができるだろう
本書をここまで読んでくれたあなたは、エッセンシャル思考の考え方とやり方を十分に理解できたと思う。この章の目的は、学んだことを人生のすみずみにまで浸透させ、エッセンシャル思考を生きる人になってもらうことだ。
第1章で説明した「成功のパラドックス」を覚えているだろうか。明確な目的意識を持って成功へと突き進むが、成功するとチャンスや選択肢が増え、結局自分の方向性を見失ってしまう。多方面に手を出したあげく、すべて中途半端になって、何もまともに達成できない。 単に成功をめざしてもうまくいかないのは、そのせいだ。そこから脱け出すためには、エッセンシャル思考であるしかない。
エッセンシャル思考の目的は、世間的な成功を手に入れることではない。人生に意味と目的を見いだし、本当に重要なことを成しとげることだ。将来自分の人生を振り返ったとき、どこにでもありそうな達成リストが並んでいるよりは、自分にとって本当に意味のあることをひとつ達成したと確信できるほうがいい。 エッセンシャル思考を真に身につけ、あらゆる場面でそれを生きることができれば、世界はこれまでとは違って見えてくる。エッセンシャル思考を自分の血肉とし、本能のように使いこなそう
考え方が心の底までしみこんだとき、 それは自分を内側から変える力となる
「人は心で思うところの者になる(6)」という言葉があるように、心の奥までしみこんだ考えが、私たち自身を形づくっていくのであ
。
エッセンシャル思考を身につけるには、それなりに時間がかかる。だがいったん身につければ、その恩恵は一生もの
自分の本当にやるべきことがクリアに見えてくる
エッセンシャル思考の人は、自信を持って立ち止まり、ゆっくりと考え、きっぱりとノーを言うことができる。もう他人に振りまわされたり、こき使われたりしない。 他人の言いなりになるのを避けるためには、自分で優先順位を決めるしかない。最初は尻込みするかもしれないが、やろうと思えばきっとできる。自分の力を信じよう。 ◆日々が楽しくなる 自分のやるべきことが見えていると、日々の暮らしが充実し、今をもっと楽しめるようになる。 エッセンシャル思考のおかげで、私は数々のかけがえのない思い出を手に入れてきた。よく笑うようになったし、楽しいと思えることが増えた。人生がシンプルになったおかげだ。 ダライ・ラマも言っている。 「シンプルな人生は満たされた人生です。幸福に生きるためには、シンプルであることが何より重要なのです」 本質を知り、本質を生きる エッセンシャル思考の生き方は、意味のある生き方だ。本当に大切なことを大切にする生き方だ。 そのことを考えるとき、いつも思い出す話がある。3歳の娘を亡くした男性の話だ。彼は娘の短い人生を形に残すため、一本の動画をつくることにした。 そこで撮りだめていたビデオに目を通していたのだが、あまりの物足りなさに驚いてしまった。 普段から、旅行や外出の際には必ずカメラをまわしていた。だから数はたくさんあった。ところが、映っているのは景色や食べ物や建物ばかり。 娘の顔のアップなど数えるほどしかない。旅行先の珍しいものを撮るのに夢中で、本当に大切なものをおろそかにしていたのだ。 この話は、私に2つの教訓を与えてくれた。ひとつは、自分にとって家族がどれほど大切かということ。そしてもうひとつは、人生の残り時間が本当にわずかしかないということだ。 人生はあまりに短い。それは悲しむよりも、むしろ喜ぶべきことに思える。短い人生だからこそ、勇気を出して冒険できる。間違いを恐れずにすむ。かぎられた時間の使い方を、よりいっそう厳密に選ぼうと思える。 旅行するたびに墓地を訪れるという知り合いがいるが、それも(風変わりではあるけれど)理解できるような気がする。存分に生きるためには、死を正面から見据える必要があるのだろう。 エッセンシャル思考を生きることは、後悔なく生きることだ。本当に大切なことを見極め、そこに最大限の時間とエネルギーを注げば、後悔の入り込む余地はなくなる。自分の選択を心から誇りに思える。 豊かで意味のある人生を選ぶか、それとも苦痛と後悔に満ちた人生に甘んじるか。この本を読んでくれたあなたには、ぜひ前者を選びとってほしい。人生の分かれ道に直面したら、自分にこう問いかけてほしい。 「本当に重要なのは何か?」 それ以外のことは、全部捨てていい
リンクトインのジェフ・ワイナーCEOは、「より少なく、しかしより良く」がリーダーシップの決め手だと考えている
これまでに私は500人以上の経営者やリーダーにインタビューをおこない、1000を超えるチームのデータを収集した。まとまりのあるチームと働くのはどんな経験だったか、マネジャーの役割はどのようなものだったか、結果はどうなったか。一方、まとまりのないチームと働くのはどんな経験だったか、マネジャーの役割はどのようなものだったか、結果はどうなったか。 調査の結果、チームのパフォーマンスは目的の明確さに大きく左右されることがわかった。目的が明確であれば、チームのメンバーは予想以上の力を発揮してくれる。一方、チームの目的や個々の役割が明確でない場合、チームは混乱し、ストレスとフラストレーションがたまり、結果は失敗に終わる。ある会社の副社長は、「明確さがすなわち成功なのです」と言っていた。 「より少なく、しかしより良く」がチーム運営にとって重要であることは明らかだ。現代の企業はめまぐるしい変化の渦中にあり、数えきれないほどの可能性に直面している。チャンスが多いのは悪いことではないが、チームの目的がきわめて明確になっていないかぎり、本当に重要なチャンスを見つけるのはかなり難しい。ここで非エッセンシャル思考のマネジャーは、すべてのチャンスを追いかけようとする。その結果、メンバーに過大な負担がかかり、パフォーマンスは停滞する。 エッセンシャル思考のマネジャーは、けっしてすべてをやろうとしない。明確な目的を持って仕事を精選し、あらゆる業務を「より少なく、しかしより良く」の方針で実行する。その結果、チームの結束は強まり、さらなる高みへとブレイクスルーできる。 エッセンシャル思考のリーダーはいかにチームを率いるか 本書では何度も「非エッセンシャル思考 エッセンシャル思考」の比較をしてきた。これは個人にかぎらず、チーム運営にも当てはまる。2〜3人の小さなチームでも、数百人以上の大企業でも基本は変わらない。
ジム・コリンズ『ビジョナリーンパニー3 衰退の五段階』(山岡洋一訳, 日経BP社, 2010)
リチャード・コッチ『人生を変える80対20の法則』(仁平和夫訳, 阪急コミュニケーションズ, 1998)
『人生を変える成功へのパワールール』(高遠裕子, 飯村育子訳, 阪急コミュニケーションズ, 2000)
『人生を成功させるための「80対20」革命!』(門田美鈴訳, ダイヤモンド社, 2003)
『楽して、儲けて、楽しむ 80対20の法則 生活実践篇』(高遠裕子訳, 阪急コミュニケーションズ, 2005)
コッチ『人生を成功させるための「80対20」革命!』
メアリー・バフェット, デビッド・クラーク『史上最強の投資家バフェットの教訓─逆風の時でもお金を増やす125の知恵』(峯村利哉,徳間書店, 2008)
ジョン・C.マクスウェル『あなたがリーダーに生まれ変わるとき─リーダーシップの潜在能力を開発する』(宮本喜一訳, ダイヤモンド社, 2006
スコット・ドーリー, スコット・ウィットフト『MAKE SPACE メイク・スペース スタンフォード大学dスクールが実践する創造性を最大化する「場」のつくり方』(藤原朝子訳, 阪急コミュニケーションズ, 2012)
リチャード・S. ウェストフォール『アイザック・ニュートン』(田中一郎, 大谷隆昶訳, 平凡社, 1993)
C.S. ルイス『悪魔の手紙』(中村妙子訳, 平凡社, 2006)2004年2月のTED講演『Flow, the Secret to Happiness』2010年2月のTED講演『Bring on the Learning evolution!』2008年5月のTED講演『Play Is More Than Just Fun』
スチュアート・ブラウン『遊びスイッチ、オン!─脳を活性化させ、そうぞう力を育む「遊び」の効果』(足立理英子ほか訳, バベルプレス, 2013)
スティーブン・R. コヴィー, レベッカ・R. メリル, A.ロジャー・メリル 『7つの習慣 最優先事項─「人生の選択」と時間の原則』(宮崎伸治訳, キングベアー出版, 2000)
スティーブン・キング『書くことについて』(田村義進訳, 小学館, 2013
キング『書くことについて』
ヘンリー・クラウド, ジョン・タウンゼント『境界線(バウンダリーズ) 』(中村佐知, 中村昇訳, 地引網出版, 2004)
ジム・コリンズ, モートン・ハンセン『ビジョナリーカンパニー4 自分の意志で偉大になる』(牧野洋訳, 日経BP社, 2012) エリヤフ・ゴールドラット『ザ・ゴール — 企業の究極の目的とは何か』(三本木亮訳, ダイヤモンド社, 2001)
チャールズ・デュヒッグ『習慣の力』(渡会圭子訳, 講談社, 2013)
アルベルト・アインシュタイン『晩年に想う』(中村誠太郎ほか訳, 講談社, 1971)

