高血圧を下げる方法

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厚生労働省によると、成人日本人の約30%が高血圧です。高血圧はほとんど症状が現れず、自覚症状がないまま進行して、患者さんが気づく前に心臓発作、脳梗塞、腎不全、失明、壊疽などの重篤な病気を引き起こすことがあるため、「沈黙の殺人者」とも呼ばれています。

高血圧は、以下のように分類されます。

正常値:上限120 mmHg、下限80 mmHg以下
やや高め:上限120〜139 mmHg、下限80〜89 mmHg
高血圧ステージ1:上限140〜159 mmHg、下限90〜99 mmHg
高血圧ステージ2:上限160〜170 mmHg、下限100 mmHg以上

高血圧と診断された人の80%は、やや高めかステージ1に該当します。高血圧の原因には、腎臓病やホルモンの異常、薬の副作用など因果関係のはっきりしているものがありますが、これらは全体の約10%です。残りの90%は原因不明の状態です。

しかし、生活習慣による高血圧のリスクとして、肥満や運動不足、タバコ、お酒、塩分の摂りすぎ、野菜不足、肉の過剰摂取、ストレス、睡眠不足、慢性痛、加齢が挙げられます。これらのなかで、加齢以外はすべて生活習慣によって引き起こされるものです。

体重が増加すると、増えた体重分の栄養素や酸素を供給するために必要な血液量も増え、心臓に負担がかかります。運動不足は心臓の機能低下を引き起こし、タバコに含まれる化学物質は血管を傷つけるだけでなく、血管を細くします。また、塩分の摂りすぎは水分の保持量を増やし、血量が増えて心臓への負担になります。

高血圧と診断されると、ほとんどの場合、血圧降下剤が処方されます。しかし実際には、医学の教科書、医学雑誌、専門書、医学協会などで説明される高血圧の治療においては、ステージの低い高血圧の治療には薬に頼らず、生活習慣や食生活の改善が勧められています。

生活習慣や食生活を変えることは、面倒くさいことであり、時には辛いと感じることもありますが、これらの改善は高血圧の治療において非常に重要な役割を果たします。そのため、血圧降下剤だけでなく、生活習慣や食生活の改善も考慮することが必要です。

高血圧の治療

高血圧を根本的に治したいと思うなら食生活の改善、運動、ストレスのマネージメント、不眠の解消、慢性痛の治療が必要になります。

食生活の改善

食生活の改善については、具体的には低脂肪や低コレステロールの食品を摂取し、牛肉や豚肉は避けることが大切です。
脂肪分は体内に吸収されて体脂肪となり、さまざまなホルモンを分泌し、血圧を上げる原因になります。また、砂糖と塩分の摂取量も制限する必要があります。特に日本人は塩分の摂取量に注意が必要です。塩分を摂りすぎると一時的に体内の水分保持量が増え、血圧が上昇するだけでなく、慢性化すると心臓肥大や動脈硬化、腎不全の原因となることがあります。そのため、野菜と果物を増やし、穀物は玄米などの全粒粉に、魚や鶏肉、ナッツ類を多く摂取し、食物繊維を多く摂るようにしましょう。

セロリやニンニク、タマネギなどの野菜を多く食べると血圧が下がりやすいという研究もあります。
また、2週間程度の短期間のベジタリアン生活だけでも血圧を大幅に改善することができます。

日本の伝統食である納豆には、ナットウキナーゼと呼ばれる酵素が含まれており、血栓の形成を予防し、血流を改善する効果があります。
さらに、納豆にはビタミンK2が多く含まれ、カルシウムが血管に付着するのを予防する作用もあります。

運動

どの程度の高血圧であっても、運動により大幅に改善が見込めます。一般的には、最低でも週3回、それぞれ30〜60分間の継続的な運動を行うことが推奨されます。この際には、最大心拍数の60〜80%を維持できるようにすると、より一層の効果が期待できます。

最大心拍数の求め方は、220から自分の年齢を引くことで求められます。
例えば、60歳の場合は、220-60=160となります。そして、最大心拍数の60%は96、80%は128となります。

ストレスマネージメント

ストレスマネージメントのなかで、特に高血圧に効果的な方法に「バイオフィードバック」というテクニックがあります。

心臓の鼓動は呼吸によって影響を受けます。息を強く吸うと心拍数は早くなり、息を吐くと心拍数は遅くなります。これをグラフに表すと、息を吸うと心拍数が徐々に早くなる上昇曲線を描き、その後息を吐くと心拍数が遅くなる下降曲線を描きます。

連続して深呼吸を行うと、上昇曲線から下降曲線へと連続的な波形のグラフが描かれます。この心拍数の波動が一定で大きいほど心臓はリラックスした状態になり、血圧は低くなります。逆に心拍の波動が不規則で早い状態は、不安や怒り、ストレスがかかっている状況で心臓に負担がかかり、血圧は上昇します。そのため、呼吸を一定にすることで心拍の波動を一定にゆっくりとすることができ、リラックスした状態を作り、血圧を下げることができます。  具体的には、5秒間かけて息をゆっくりと吸い、5秒間かけて息をゆっくりと吐く、という呼吸法を最低5分間行うことが効果的です。

栄養素

高血圧に有効な栄養素として、カリウム、マグネシウム、オメガ3、ビタミンD、ビタミンE、L-カルニチンが挙げられます。
カリウムは体液のバランス調整や心臓の収縮、筋肉、神経の正常な働きに欠かせない栄養素です。

マグネシウムは筋肉の緊張を緩和し、血管を拡張する作用があります。オメガ3は血圧の低下だけでなく、心臓や血管疾患の予防にも効果的です。 ビタミンDは薬のACE阻害剤に似た作用があり、血圧を下げる作用がありますが、過剰摂取は副作用があるため、サプリメントを摂取する場合は血液検査を受けることをおすすめします。

また、ビタミンDを摂取する際には、ビタミンK2も併せて摂取することが望ましいです。ビタミンK2にはカルシウムの血管内への沈着を防止する働きがあるため、動脈硬化を予防する働きがあります。  ビタミンEは血管を保護するための抗酸化作用や抗炎症作用があります。L-カルニチンには脂肪燃焼効果だけでなく、血栓予防、血流促進、抗炎症作用、心筋保護作用、心臓代謝の促進など、心臓や血管にとって非常に有益な作用があります。

血圧を改善するには、少なくとも1か月間の生活習慣改善が必要であり、それを継続することが重要です。まず、薬に頼らずに先に述べたことを試してみてください。

非常に高い血圧(高血圧ステージ2:160-170/100以上)の場合は薬によるコントロールが必要ですが、生活習慣の改善は薬の作用を高め、薬の使用を減らし、生活の質を向上させることができます。自分ができる範囲で構いませんのでぜひ実践してみてください。

参考文献

小澤 栄治『自然療法の専門医が教える症状別実践ガイド: ~全49の症状を網羅した自然療法の決定版~ 』Independently published 、2024年、474頁