花粉症への対策

この記事を読むのに必要な時間は約 6 分です。

日本の花粉症シーズンは、杉やヒノキの花粉が飛散する2月から5月にかけての時期が最も顕著ですが、イネ科の植物やブタクサなどは初夏から秋にかけて花粉を飛ばします。

どの植物の花粉にアレルギーがあるかによって、悩まされる時期は異なります。

花粉症の原因

花粉症の症状はそれほど重篤ではありませんが、不快感は相当なものです。くしゃみ、鼻づまり、目のかゆみから始まり、ひどくなると副鼻腔炎や慢性頭痛、慢性疲労まで引き起こすことがあります。症状がでた場合には落ち着くのを待つしかなく、花粉症の人は家にこもりがちになります。

花粉症の増加は、免疫系へのストレスの増加が原因とされています。空気汚染による鼻の粘膜炎や食品の汚染、食品添加物の増加がアレルギー反応を引き起こしやすくしています。

さらに、花粉症の主要な原因は腸内環境にあります。私たちの体の免疫細胞の70%は腸に集中しており、免疫システムの発達には腸内細菌が大きく影響を与えます。

腸内細菌は免疫細胞とコミュニケーションをとり、免疫力を高めたり、過剰な免疫反応を抑える信号を出します。腸内細菌環境が乱れると、体は花粉などに過剰に反応します。

特に、幼児期に過度に清潔な環境で生活すると、免疫システムを鍛える機会が失われ、アレルギーや免疫のコントロールが効かなくなる可能性が高まります。
また、善玉菌が生産する短鎖脂肪酸が不足するとアレルギー反応が起こりやすくなります。

花粉症の治療

花粉症の治療の第一歩は、アレルギー体質の改善です。アレルギー反応は、アレルゲンの蓄積によって引き起こされます。これは家に溜まるゴミに例えられ、人によって個人差がありますが、毎日少しずつゴミが溜まり、許容量を超えるとアレルギー反応が起こります。そのため、重要なことは毎日アレルゲンを排除し、体内の蓄積を減らすことです。これには、食生活の改善、アルコール摂取量の減少、禁煙が重要です。

完全なアレルゲンの除去は難しいですが、カーペットや絨毯、布製家具、カーテンなど、花粉やホコリ、ダニを溜め込む家具の掃除や交換で、アレルゲンとの接触を大幅に減らすことができます。少なくとも寝室では、枕カバー、毛布、ベッドカバー、マットレスパッドを週に1回以上、無添加・無香料の洗剤でお湯洗いし、アレルギーフリーの環境を整えましょう。空気清浄機も非常に効果的です。

花粉は髪の毛や洋服にも付着するため、できるだけ早く着替えを済ませ、シャワーを浴びる習慣を身につけるのも良いでしょう。

また、鼻うがいも花粉症対策としてぜひ取り入れていただきたい生活習慣です。鼻うがいは、鼻腔を生理食塩水で洗浄することで、アレルゲンや鼻水を洗い流します。
これにより、炎症を軽減して鼻詰まりを解消し、花粉症の症状を改善することができます。

次に、花粉症の治療に欠かせないのは、胃腸環境を整えることです。こちらに関しては、別冊『専門医が教える基礎から学ぶ自然療法』の第3章「胃腸の健康」を参考にしてください。

花粉症の体質改善に重要な栄養素

花粉症の体質改善に最も重要な栄養素は、オメガ3不飽和脂肪酸です。これは魚に多く含まれる油で、炎症を抑える働きがあります。
ただし、体内のすべての細胞にオメガ3不飽和脂肪酸を取り込むには時間がかかるため、毎日の食事から魚を積極的に摂取しましょう。

ビタミンDは免疫力を調整し、過剰な炎症を抑えることで、鼻詰まりや目のかゆみなど花粉症の症状を緩和します。
また、目、鼻、喉の粘膜のバリア機能を改善し、花粉によるアレルギー反応を軽減する効果もあります。

ビタミンDは日光を浴びることで皮膚で生成できますが、花粉の季節に日光浴をする人は少ないでしょう。そのため、外出時に腕や足をできるだけ露出するか、サプリメントで摂取することが効果的です。1日に25-50マイクログラムのビタミンDを摂取してください。摂り過ぎには副作用があるので、定期的に医療機関で血中ビタミンD値を測定しましょう。

また、花粉症の治療に有効なサプリメントにはビタミンC、ケルセチン、ヘスペリジン、ネトル、N-アセチルシステインがあります。
ビタミンCはアレルギーの原因物質であるヒスタミンの分泌を抑えるとともに、その分解を促進します。1日に3-5グラムのビタミンCを数回に分けて摂取すると効果的です。

バイオフラボノイドの一種であるケルセチンとヘスペリジンは、ヒスタミンの放出をブロックし、アレルギー反応を軽減してくれます。

ネトルの葉は、長年アレルギー治療に用いられてきた生薬です。ネトル葉はヒスタミンの働きを阻害し、炎症を引き起こすサイトカインの分泌を減らすとともに、炎症を抑えるサイトカインの分泌を促進します。

N-アセチルシステインは、最も強力な抗酸化物質であるグルタチオンの生産を促進し、花粉症を引き起こしにくくしてくれます。
さらに、N-アセチルシステインは鼻水を薄めて鼻詰まりを解消する働きがあります。

参考文献

小澤 栄治『自然療法の専門医が教える症状別実践ガイド: ~全49の症状を網羅した自然療法の決定版~ 』Independently published 、2024年、474頁

前の記事

便秘の改善