肌のシミ対策

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シミ自体は命に関わるものではありませんが、生活の質(QOL)を下げる要因となります。

シミが発生するプロセス

根本原因となるのは太陽光に含まれている紫外線です。体に影響を与える紫外線には、UVA (A波)、UV B (B波)があります。このうちA波は紫外線の90%を占めており、皮膚の奥にある真皮まで届いて、活性酸素を発生させます。B波は紫外線の10%ほどですが、表面の表皮で活性酸素を生じさせます。紫外線を浴びて皮膚で活性酸素が発生すると、皮膚の浅いところにあるメラニン細胞(メラノサイト)でメラニンという褐色の色素が生まれます。これは皮膚細胞の細胞核をさらなる活性酸素による酸化から守ろうとする正常な防衛反応です。日焼けをすると肌がピリピリするのは、紫外線で活性酸素が発生しているサインです。

生じたメラニンは皮膚の新陳代謝(ターンオーバー)で下からトコロテン式に押し出されて、次から次へと排出されます。メラニン細胞もメラニンをずっと作り続けるわけではありません。しかし、活性酸素がこの正常なターンオーバーとメラニン細胞を狂わせると、ターンオーバーが遅くなって、排泄が滞り、メラニンが皮膚に蓄積し、やがてシミとして定着します。ターンオーバーの遅延はタンパク質の欠乏でも生じます。

シミ対策

シミの対策は、帽子や長袖の服を着用することで、紫外線は避けて、日焼け止めを使うのが基本です。目の角膜から紫外線が入ると、そこで活性酸素が発生、「皮膚でも紫外線を浴びた」と脳が勘違いをしてメラニンの生成を増やしてしまいます。対策としてサングラスが有効です。漁師さんやサーファーたちが白内障になりやすいのも裸眼で、長年紫外線を浴びているからです。白内障は紫外線で生じた酸化ストレスによるタンパク質変性で目の水晶体が濁ったものです。

ビタミンA、βカロテン、アスタキサンチンのような脂溶性カロテノイドには抗酸化作用があり、細胞膜に溶け込んで、紫外線の刺激で活性酸素が発生したときに除去してくれます。事前にこれらの栄養素を取っておくとメラニンが作られにくくなり、日焼けをしてもピリピリ感が少なくなるはずです。使用性カロテノイドを含む美白化粧品の使うのも1つです。同時に皮膚のターンオーバーを助けてくれるタンパク質、亜鉛、ビタミンAといった栄養素の取り入れるべきです。

肝斑によるシミ

ほほ骨のあたりに左右対象に現れるのが特徴で、30代以降の女性に多いシミです。原因の1つは、肝臓の解毒機能の低下による酸化ストレスの上昇にあります。妊娠中の女性には肝斑が出やすくなりますが、これは妊娠中に女性ホルモンの分泌が増えて、それを解毒する肝臓に負担がかかって酸化ストレスが増えるためです。妊婦さんの肝斑は出産が終わるといつの間にか消えるのが普通です。肝斑の特効薬である「トランシーノ」は、トラネキサム酸が主成分ですが、このトラネキサム酸は肝臓の解毒過程で出るキノンという活性酸素源を無害化する物質です。肝臓での活性酸素の発生を抑えて、シミの生成にブレーキをかけてくれます。

できてしまったシミ対策

できてしまったシミに関してはビタミンCが有効です。ビタミンCは還元力が高いので、メラニンを還元して白っぽくしてくれます。ビタミンCの働きは、アミノ酸の一種であるシステインによってサポートされます。

体内にも抗酸化メカニズムがあり、抗酸化酵素が備わっています。この抗酸化酵素を円滑に働かせるためには、酵素の本体であるアミノ酸、その活性の中心となるマンガン、亜鉛、鉄といった抗酸化系ミネラルを摂っておく必要があります。

ビタミンCを肌に直接塗るとシミを薄くできるか?

ビタミンC誘導体

参考文献:

斎藤糧三「慢性病を根本から治す:機能性医学の考え方」光文社新書、2015年、242頁

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